減塩流行の昨今、当店の干物についてご存じないお客様には「塩辛くないですか？」とご質問される方もいらっしゃいます。端的に申し上げれば、うちの干物は減塩と言えます。しかし、只の減塩ではありません。
塩を薄くすれば良いという行為は簡単です。しかし、私たちが心がけている事は「極上素材の持ち味を最大限に引き出す干物づくり」です。
そのためには、塩を薄く漬けるだけでは魚の持つ風味や香りをひきたたせることは出来ません。塩干しの干物を美味しく仕上げるためには、その塩加減が最も重要です。それはとても微妙なもので、ほんの僅かな漬け具合の加減でまったく違う味に変化してしまいます。素材それぞれ、季節や気候などによってもたった一さじで味が変わるのです。例えば、毎年上がる真アジ一つをとっても、その魚と漁場によってそれぞれ脂の質や肉のしまり具合も異なります。そのため当店ではその仕込みの都度、魚にあった漬け具合へと変えております。
塩加減の極意。それは、「魚を見る目」そして「心を込めた手間」という単純なことに尽きるのです。

効率よく生産性を上げるには、高い塩度（えんど）に短時間で漬け上げるのが一番です。しかし、それでは繊細な塩加減に仕上げることが出来ません。即ち、美味しい干物にはならないのです。
一方、低い塩度で長く漬けることにより、魚の持つ風味や香りをひきたたせる「繊細な美味しい干物」に仕上げることが出来ます。
効率を考えたら旨い干物づくりはできない。先に申し上げた「塩加減」と同じく、万宝は手づくりにこだわります。

塩加減・漬け方と並び大切なのが、味の決め手となる塩の種類。
当店では、全国から天然塩の逸品を取り寄せ吟味し、そのなかから長い時間をかけて選んだものだけを幾通りにも、そして丹念にブレンド致しました。
出来上がった特製ブレンド塩は、ミネラル成分が豊富で塩味に深い旨みがあります。さらに、それを使用する魚の素材ごとにマッチするよう、ブレンドの割合を長年編みだした配合へ調整しております。残念ながら、その塩の種類・配合をお教えすることはできません。
これは、美味しい干物をつくりたいという私たちの情熱が産んだ「塩の極上ブレンド」であると自負致しております。